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副題に、注目

 投稿者:●之助  投稿日:2018年 6月26日(火)11時24分13秒
  通報 返信・引用 編集済
  国基研創立10周年シンポジウム
「世界の近未来を予測する―日本は生き残れるのか?」
第1部 基調講演 詳報


国基研 創立10周年シンポジウム/2018年5月17日/イイノホール

トッド博士の講演タイトル「不確実性が高まる世界――アングロサクソン世界の危機について」に、こむずかしい、いかめしすぎる、と身をひいてはならない。博士が言わんとすることは、実にシンプルなのだ。中国、北朝鮮、中東、EUそしてアメリカ…、変動きわまりない世界に日本および日本人が安全に暮らすのにはどうしたらよいのか。「フランス人左派で平和主義者」を自称するトッド博士が試みた日本への提言とは、観念的平和論者を仰天させるに十分だった。つまり、アメリカの“核の傘”ならぬ“独自の核武装”こそ平和問題の核心だというのである…。


(登壇者略歴)
エマニュエル・トッド Emmanuel Todd
 歴史人口学者、家族人類学者。1951年生まれ。現在、フランス国立人口学研究所(INED)に所属。ケンブリッジ大学に入学後、1976年に『工業化以前のヨーロッパの七つの農民共同体』と題する博士論文を提出し、博士号を取得。同年、最初の著作である『最後の転落』で、人口統計学的な手法を用いて旧ソ連の崩壊を予測した。これは数か国語に訳され、25歳にして国際的に知られるようになった。その後も、国際社会の全体的構造を家族体系により分類し、2002年に出版された『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』ではアメリカの金融危機を予告し、世界的なベストセラーとなった。主な著書にアラブの春を見通した『文明の接近』や『家族システムの起源Ⅰ ユーラシア(上・下)』『グローバリズムが世界を滅ぼす』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』など多数。






櫻井国家基本問題研究所は創立から十年を迎えました。国基研は日本国を立て直すという固い意志の下で、創設したものです。戦後七十年が過ぎてもなお、わが国は本当の意味で独立国なのか、自立しているのか、といった議論があります。また、そう問わなければならない多くの現象が目の前で起きています。

私たちが今、目にしているのは、これまで見たこともない大きな世界の地殻変動です。その中で、何とかして私たちの国はしっかりとした形で生き残りたい。幾百世代の先人たちがこの国を愛し、大事な価値観を守り、それを維持し伝えてきた。その思いを引き継ぎながら、国としての基盤をきっちりとつくりたい。そんな思いから、具体的には、憲法改正を掲げて国基研をつくりました。

それから、信じられないほどの速さで十年が過ぎました。この十年間、まだまだ目標を達成するところには至ってはいませんが、私たちはほかのシンクタンクと比べても、本当に一生懸命やってきましたし、やってくることができたと思います。それはひとえに会員の皆様方、研究者として私たちを支えてくださった皆様方のおかげです。理事長として、ここに十周年を迎えられたことを心から喜び、皆様方に心よりのお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

世界は十年前とどのように変わったのか。見たこともない変化が足元に迫っています。直接的には北朝鮮の問題があります。多くの日本国民が拉致されたままです。この日本国民をなぜ、私たちの国は救い出すことができないのか。国家として、なぜ、行動できないのか。なぜ、他国にお願いするしかないのか。

北朝鮮の後ろには中国が控えています。中国は大きく膨張しようとしています。私たちはその情報を日々、危機感を持って受け止めています。中国が形成しようとする国際社会は、アメリカを主導国とする戦後の国際社会とは全く異なる価値観を掲げています。今、私たちが直面しているのは、大きな枠組の中での価値観の戦いです。

その中で、私たちは日本の価値観を保ちながら、自由主義社会、民主主義社会をどのように守り、堅固にしていくのかという課題に直面しています。これまで、国基研は地政学や軍事力、あるいは経済学といった要素で国際社会を分析してきました。それも非常に重要な要素です。

しかし、今日ここに十周年を記念してお招きしました講師は、フランスのエマニュエル・トッド博士です。



トッドさんの国際情勢に対するアプローチの仕方は、私たちとは全く違います。トッドさんは、歴史人口学者で、人類学者でもいらっしゃいます。家族のあり方というものに非常に重要な意味を与えています。そして、若い頃から、通常の論理とは異なる国際関係論を展開して、世界の注目を浴びてきました。

最初の著作は一九七六年、二十五歳のときに書いた『最後の転落』です。その中で、旧ソ連の崩壊を予測しました。見事に当たって、国際的に広く認められるところとなったのです。

その後、トッドさんは、人口構成の面から、ユニークな国際社会を分析する手法をさらに発展させ、二〇〇二年には『帝国以後―アメリカ・システムの崩壊』という世界的なベストセラーを出されました。その他、本当に多くの著作がありますので、お読みになった方も少なくないと思います。

今日はトッド博士のユニークな視点から、現在の世界を分析し、世界と日本の近未来を覗いてみたいと思います。今までにないものの見方を提供されるという意味で、非常に刺激的な講演になると思います。

トッド私は日本に来るたびに、うれしくて感激しています。日本という国、そして日本文化には大変な愛情を抱いているということをまずお話ししておきたいと思います。

今のすばらしい紹介に、お礼申し上げます。私の研究について、いろいろお話しくださいましたが、今日は、決して将来の予測はしないということだけ、最初に申し上げておきます。現在の状況はあまりにも複雑だからです。今回の講演会に関して、原稿を用意しましたが、それを何度も何度も見直さざるをえませんでした。

なぜなら、この数週、この数ヵ月の間、状況が急速に変化していくからです。これは本当に問題です。従って、これから提案するのは、私が何を考えているかという考察、歴史を今までとは異なる、通常とは異なる形で見ていく。その見方といくつかの結論も申し上げますが、決して将来に対する確固たる予測というわけではありません。

私が最後に東京に来たのは、二〇一六年の十月で、ドナルド・トランプが大統領に選出される一ヵ月前のことでした。Brexit(ブリグジット=英国のEU離脱)はすでに投票で決定していましたが、当時、私はアメリカを世界一の大国であり、安定していると考えていました。その前回の東京の講演会で、私は世界を地政学的に見て、アメリカ、ロシア、日本という三つの安定した大国があると述べました。そして、二つの地域、国で、潜在的に不安定なところがある。それがEUと中国だと話しました。

ロシア、日本、中国、そしてEUに対する私の評価は今もほとんど変わっていません。ただ、ロシアはヨーロッパやアメリカから制裁を受けながらも、社会的、政治的安定性を増しています。自殺率や殺人事件の発生率もロシアでは下がり続けています。失業率は低く、プーチン大統領は高い支持を得ています。また、最近では、ロシアが明らかに軍事技術分野でも勢いを取り戻しています。S―400地対空ミサイルはシリアなどで、勢力均衡を維持する大きな要因となっています。トルコはNATOに所属していますが、ロシアのシステムを購入しています。

日本の基本的な問題は、人口の減少です。私は人口学者ですから、当然、日本の人口減少について、注視せざるをえません。経済的、社会的、政治的な面で、日本は非常に安定しています。ヨーロッパからやって来ると、それは一目瞭然です。日本には常に一定の安定性と活力があります。日本社会の基本はそこにあります。

ヨーロッパはほとんど麻痺状態に陥っていると思います。たしかにヨーロッパにはドイツという主要な大国があります。しかし、ドイツは今、矛盾を抱えています。輸出大国であり続けるという大きな目標があって、これはすばらしいことです。GDPの八%という貿易黒字もあります。こうした輸出大国でありながら、ドイツもやはり人口減少に直面しています。

ただ、ドイツの対応は日本とは全く異なります。それは、大量の移民を受け入れ続けているからです。その結果、ドイツは、大国であり続けるという目標を断念しているわけではありませんが、国内のバランスが非常に重要になっています。つまり、ドイツは一方では開放的であろうとしていますが、同時に、国内の安定性の問題がありますから、国の中に少し閉じこもる必要もあります。もう一つ、ドイツには軍事的な能力があまりありません。そのために、ドイツ、そしてヨーロッパが麻痺しているという状態に拍車がかかっているのです。これは前回、日本に来たときからあまり変わっていない傾向です。

中国はアメリカと戦略的に対立するような発言をしていますし、大変な人口を抱えています。成長率が高いとはいえ、中国は極めて脆弱な大国だと思います。すべての人口学者は私と同意見です。その点で、私の見解が独創的だということはありません。中国は、出生率が大幅に急落しているため、急速な高齢化に直面しています。また、人口学者たちは、中国に基本的な異常事態があることを知っています。出生のときの性比、つまり、赤ちゃんが生まれたときの男子と女子のパーセンテージです。普通、ユーラシアの社会では、女子が一〇〇人生まれた場合、男子は一〇五、六人です。ところが、中国では一〇〇人の女子に対して、男子が一一八人になっています。ということは、選別的な中絶、女性の胎児が中絶されているということです。これは当然のことながら、長期的には人口学的な不均衡を生み出します。多くの中国人男性が妻を見つけられないという状態になります。

何よりもそれは中国のメンタリティが古いということです。メンタルな意味で、この国は古い伝統的な考え方に戻っているということを示しています。

中国の教育レベルを見てみましょう。若い人たちの高等教育進学率は、まだ六%です。一方、ヨーロッパの国、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、日本などすべての先進国では、若者が高等教育に進む率は二〇%から五〇%の間にあります。中国は大国であり、中国の国内市場は非常に重要である。そして貿易黒字があって、外交的にも大きな力を行使できる。ですから、中国に期待する「神話」が生まれるのです。しかし、新しい現代的な世界ではないと思います。

人口学者から見ると、社会の活気は、移民のバランスによって決まってくると思います。

アメリカも、すべてのヨーロッパの国も出ていく人間より、入ってくる人間のほうが多い。ロシアでも、流入人口のほうが多いのです。日本ですら、そうです。日本はあまり移民を迎えたくないと思うかもしれませんが、多くの人が日本に来て暮らしたいと思っています。

しかし、中国はこの数字が反対です。中国の統計は、あまり信頼できませんが、通常使われる数字によると、毎年一五〇万人が中国から流出しているとのことです。中国から出ていって、戻ってこない人たちは中国人の中で最も活力があり、リベラルな人たちです。毎年、中国の教育省は、留学した中国人たちがどれだけ戻ってくるのか、非常に不安な気持ちで見ているわけです。ですから、中国は大国ですが、もろい大国。私は中国を安定した国として見ることができません。将来的に危機があるかもしれない国です。それが、どのような危機なのか、今は申し上げられませんが、一年半ずっとそう考えています。

イギリス、オーストラリア、カナダを含め、アメリカなど、いわゆるアングロサクソンの世界は、全く状況が変わりました。この英語圏は、むしろ新しい不安定の極になったとすら思います。

私はフランス人です。しかし、反アメリカのフランス人だと思わないでください。私にはアングロサクソンの親族がいますし、母は第二次大戦のとき、アメリカに亡命して、父は大戦の後、アメリカで亡くなっています。そして、私の長男は私と同じように、イギリスに留学して、イギリス国籍を取得しています。私にはイギリス国籍を持っている孫が二人いるのです。

ですから、私がアングロサクソンの世界に危機が起きるかもしれないと言うとき、反アメリカの、いわゆるドゴール主義的な典型的フランス人の発言ではありません。私はアングロサクソンの世界が好きで、とても身近に感じています。

アングロサクソンの世界が危機を迎えるかもしれないということは、地球全体が不安定になったということでもあります。一八世紀以来、世界の経済、文化の動き、そして民主主義の政治的な動きは、アングロサクソンの世界によって突き動かされてきました。産業革命があり、イギリスの立憲制があり、そしてアメリカの動きがありました。ですから、アングロサクソンの世界が方向性を見失っているとすれば、それは、世界全体も方向性を見失っていることになります。

現在、グローバル化した資本主義の危機があります。そして、民主主義の危機が迫っています。その点では、誰も意見が一致するでしょう。レーガンとサッチャーによって、ネオ・リベラルな革命が打ち出されたアメリカやイギリスでそうした状況が起きているのです。結局のところ、自由貿易がアメリカの世帯年収の中央値を停滞させ、先進国で格差を拡大しているのは明らかです。トランプ大統領の前まで、アメリカはまさしく自由貿易の世界で支配的な立場を維持していた国です。そのアメリカでも、自由貿易によって、社会の不安定性、治安の問題が生まれています。

例えば、アメリカでは四十歳から五十四歳の白人の死亡率が、一九九九年から二〇一三年の間に増加しています。白人の死亡率です。自殺があるかもしれない。あるいは中毒死もあるかもしれない。何らかのことで絶望したという形で、自殺率や死亡率が多かったという論文の結果もあります。産業が弱体した地域では特にそうです。中国がWTOに加盟したことにより、産業が弱体したアメリカの地域では、死亡率の増加が顕著です。しかし、経済は物事の表面的な部分だと思います。

そこで、私が提案したいビジョンは、一般的に言われていることとは違うかもしれません。というのは、民主主義諸国の危機、そして経済の危機の根源的な理由は経済そのものではなく、先進諸国の場合、社会の教育構造の発展によるものだと思っているからです。つまり、根源的な民主主義的現象は経済が発展したからではなく、大衆が読み書きを学んだことによるものだと思っています。一つの国ですべての人々が読み書きできるようになったとき、また、そこで社会的な統一感が生まれ広まったとき、民主主義ができたのだと思います。

識字率が高まっているすべての国々で、政治的な統合が生まれ、いくつもの危機を経てから、最終的には、何らかの形で普通選挙という選挙方法が生まれました。こうした民主主義的な社会の基盤には、教育が均質だったという事実があります。民主主義がこういう形であるとすれば、日本でもドイツでも西欧でも、あるいはアングロサクソン系でも、この考えは通用するでしょう。そして、ロシアにもこの考え方は適用できます。共産党の危機は、結局、民主主義への移行の危機によって起こったものだと思います。ドイツのナチスも同じような形で分析することができます。

ただ、人口学的な問題を研究するとき、教育だけを取り上げるのはもちろん不十分です。特に、最も進んだ国々の間には、異なる人類学的な形態、あるいは習俗、メンタリティの違いがあると思います。その違いは、伝統的な農民社会の家族形態がもともと違っていたから生まれたものです。家族形態の分析が私の本来の専門分野で、地政学の専門ではありません。そして、世界の大きな民主主義国の中には、それぞれ異なった家族形態があったのです。家族形態は、それぞれ自由、あるいは権威主義的、平等、不平等、もしくは平等性の無関心といった価値観を伝えてきました。

一般的に民主主義に進む動きは、識字率の向上によって可能になったのですが、その結果、さまざまな形態の民主主義の形が生まれたのです。

最初に、アングロサクソン系の世界を見てみましょう。私が絶対的核家族と呼んでいる、両親と子どもだけの核家族のモデルです。相続もそれほど平等主義とは言い切れません。そうした国々では、個人主義的な気質が発展しました。そして、その国では政権交代があり、二大政党が政権を獲得するために対立します。例えば、労働党と保守党のイギリス、アメリカは共和党と民主党という対立です。

ドイツと日本は、似たような家族形態がもともとありました。直系家族という家族形態に基づいています。直系家族というのは過去の農民、あるいは過去の貴族の家族の形態で、一人が相続を受け継ぎ、家を継承するというモデルです。

それは多くの場合、長男が家を継ぐということです。男性、父系の直系家族で、このような家族形態の国では、権威主義的かつ不平等な価値観があり、一時の日本の軍国主義の台頭、ドイツのナチスなど、いろいろ難しい時期を経ました。その後、真の民主主義を生み出していますが、それは、アングロサクソン的な政権交代の民主主義でなく、私が考えた言葉ですが、垂直的民主主義です。

もちろん、情報や教育があり、法治国家で選挙権がある国ですが、垂直的な民主主義というドイツや日本では、コントロールの弱い形で、国民がエリートに、より大きな権力を委譲してきました。個人的な気質のアメリカ、イギリス、フランスより、ドイツや日本のほうがエリートをより容易に受け入れてきたと思います。

フランスはアメリカやイギリスによく似ています。家族形態もそうです。ただ、相続のルールはとっても平等主義です。フランス人が平等、平等とうるさく言う理由はおわかりだと思いますが、フランス革命では平等が非常に重要でした。しかし、その結果、国が非常に不安定になっています。誰もが平等になると、安定した政権、政治体制は維持しきれません。

しかし、垂直的な民主主義社会では、政権交代は、むしろ例外的なものです。ドイツでは、宗教的にカトリックがいたり、プロテスタントがいたり、いろいろ多様です。そのために、ドイツの政治形態は複雑な状況となり、政権交代もあります。ただ、今のドイツの傾向は、左派と右派が連携するものだと思います。キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟が連携し、社会民主党とも連携します。ただし、あくまでも民主主義のルールを尊重しての連立です。

垂直的な民主主義の理想的な形は、日本かもしれません。日本は一時中断した時期を除けば、日本の伝統の中には常に選挙があり、教育のある人々がいる。自民党が常に政権を握り続けてきたかもしれませんが、自民党の中にいろいろな派閥がありますから、重要な政治議論は自民党の中で、かなり行われます。特殊な民主主義の形態かもしれません。

そして、ちょっとショックなこと、特に西欧人にとってはショックかもしれませんが、今ここで、プーチンの民主主義を考えてみます。ロシアの民主主義は非常に権威主義的な民主主義で、しばしば非民主主義的な制度だといわれます。しかし、ロシアでも選挙はあります。もちろん、メディアは自由に書けません。それでも、情報はそれなりに国の中に流れています。そして、家族形態は非常に共同体的なものであり、権威主義的なものであり、なおかつ平等制だったようです。ある意味で、全員一致的なものを大事にしてきた家族だと思います。

ですから、ロシアが三番目のタイプの民主主義。権威主義的ですが、全員一致的な側面のある民主主義。これも民主主義と呼べると思います。

ここまで申し上げてきたのは過去の話です。繰り返しますが、民主主義は、誰もが読み書きができるときにしか生まれません。そして、教育レベルの格差がない場合に可能なのです。

ところが、先進諸国の中で、第二次大戦の後、何が起きてきたのか。中等教育が発展し、
高等教育が発展し、その結果、社会の亀裂ができています。最も進んでいる国々の中で、かなり多い高等教育を受けた人たちと中等教育を受けた人たち、それから初等教育までの読み書きまでしかできないような人々の間に分断が生まれているのです。このような変化によって、民主主義がどう変わってきたのか。それを見るのは、とても興味深いものだと思います。

ドイツや日本といった垂直的な民主主義の国は、最初にリベラルな民主主義を打ち出した国ほどは崩れていません。ドイツと日本は、最初に民主主義を制定した国、イギリス、アメリカ、フランスの中には入りません。しかし、今、明らかにドイツと日本の垂直型の民主主義は新しい教育の階層化がもたらした「解体の力」に最もよく抵抗しています。

ドイツと日本は、もともと個人主義的な傾向がある国ではありません。しかし、高い教育レベルのポテンシャルがあり、技術的な能力を受け継いでいくことが一つの伝統になっています。これこそが、ドイツと日本の強みで、もちろん、直系家族が根底にあるわけですが、一方に初等教育、中等教育を受けた人たちがいて、他方に高等教育を受けた人がいる中で、その分断はそれほど明確ではありません。

日本では、二十五歳から三十四歳までの六〇%が高等教育の免状を、また、かなりの人が技術的な免状を取得しています。その結果、日本社会は大衆の中核部分の多くが高等教育を受けていて、初等、中等教育の人が占める位置はそれほど大きくありません。ということで、日本の社会は均質性、あるいは教育レベルの均質性を維持することができたのです。

ドイツはむしろ逆です。ドイツでは、高等教育修了者は三〇%です。しかし、日本と同じように、ドイツの社会には分断がありません。実は、ドイツでは技術的、産業的に優れたスキルを持つ技術者を生み出していて、これが高等教育修了者と同じようなレベルになっているのです。

そのため、ドイツでも日本でも、アメリカ、イギリス、フランスほど労働者や熟練技術者を低く見ることがありません。ですから、アメリカ、イギリス、フランスの社会ほど、ドイツと日本はエリートと庶民が二つの極に分断されていないのです。

アメリカ、イギリス、フランスでは、高等教育を受けたエリートたちと非エリートの人たちの間に、大変な亀裂があり、対立があり、それが非常に激しくなっています。逆説的ですが、もともと民主主義的であった国々より、ドイツと日本のように遅れて民主主義になった国のほうが、民主主義的な抵抗力を持っているのです。

こうした社会構造の違いがわかると、別の逆説を理解することができます。現在の政治学の重要なテーマ、あるいは政治制度での大きな懸念は、エリート主義とポピュリズムの対立です。トランプは、ポピュリストの大統領と見なされています。Brexitはイギリスでポピュリズムの勝利と見なされました。フランスでは、反ポピュリストの大統領を選出しましたが、国民戦線という極右のポピュリスト党が大統領選の第二回投票において、三分の一の票を獲得しています。かなり大きな数字です。

これは、日本やドイツでは見られない事態だと思います。日本では、ポピュリズムは政治的には何の役にも立たないものかもしれません。ポピュリスト運動が自民党の脅威になるような状態ではありません。庶民とエリートの間に信頼関係があるからです。国民はエリートにその権力を委託し、エリートのほうは国民に対して責任を持っています。

ドイツの状況は少し違います。ドイツでは、「ドイツのための選択肢(AfD)」というポピュリスト政党があります。労働者、学歴の低い人、若者を引きつける古典的な政党ですが、去年、一二%の投票率を獲得しました。

ドイツはナチズムの台頭を見た国ですので、これは心理的に大きなショックでした。しかし、移民の流入の多さ、また、シリア危機の後、アンゲラ・メルケル政権が受け入れた難民の数を考えると、一二%という数字は、ごくわずかなものです。しかも、ポピュリスト投票の数を分析すると、旧東ドイツ民主共和国にはほとんど難民が行きませんでした。一方で、西の旧ドイツ連邦共和国はほとんどの難民を受け入れましたが、そこでは一〇・七%の低さだったのです。従って、ヨーロッパのコメンテーターが言っているのとは全く反対に、ドイツは垂直的な民主主義で、国民がその指導者を信頼していると言えます。

ここで、問題の核心に行きたいと思います。アメリカの危機についてです。なぜ、アメリカが危機にあるのか。アメリカに対して、私は大変に悲観的です。

アメリカに関して、私の講演原稿は「統合失調症になったアメリカ」というタイトルになっています。その人格が分裂しているという意味です。

トランプ大統領の当選には恐怖を感じませんでした。この点、私はフランスでは、やや孤立した解説者でした。学歴の低い白人アメリカ人がトランプ大統領を選出しました。自由貿易に苦しみ、死亡率が増えている社会で、保護主義によって、アメリカ社会内部の対立を和らげることができ、不平等の問題を解決できると考えたからです。

私は、トランプを人間として嫌いです。彼の髪型、彼のスタイル、彼の外国人嫌い(ゼノフォビア)は好きではありません。しかし、私は研究者で、好奇心があるので、彼のラスベガスホテルに行って、泊まりました。トランプのホテルは、実に品格のないものでした。

トランプの当初の考え、つまり保護主義を実践すること。そして、アメリカ合衆国が国際社会でより謙虚な役割を担うこと。世界の警察の役割をやめること。それは良いことだと思いました。また、ロシアと良好な関係を築くことはすばらしいと思いました。トランプが勝利したことは、無責任なポピュリズムの予想外の勝利というより、アメリカ社会の苦しみを直視することを受け入れた大衆政党の勝利だと見ていました。盲目的で、帝国主義的で、自由貿易主義で、寡頭制的で、不平等の体現者、ヒラリー・クリントンに勝利したのだと思います。しかも、この寡頭制政党は、左派に代表されていました。民主党に代表されているのが奇妙でした。

トランプは外国人嫌いでした。私は、民主主義を理想的なものだとする考えを持っていません。民主主義は、そもそも普遍主義や、すべての人類を愛するというものではありません。民主主義のはじまりは、ほかの国民に対して組織するということです。特定の国民が集まって、自分たち以外の集団に相対するものです。従って、民主主義はもともと、外国人嫌いの様相を含むものです。そして、民主主義国が隣国の人たちもわれわれと似ていることに気づくと、民主主義は普遍的なステージに入っていくのです。従って、トランプの外国人嫌い(ゼノフォビア)は必要悪だと思いました。

私がアメリカに対して楽観的になれない理由は、トランプの歴史的意義に関して、見解を変えたからではありません。アメリカが分断され続けていることが問題なのです。アメリカの政治システムと文化的な状況で、矛盾する二つの社会が対立している状態です。

一方で、トランプの共和党がポピュリスト、大衆政党を代表しています。他方で、クリントン的な民主党があり、これは奇妙にも、地位的に高く、最も高等教育を受けた人たちとブラック、ヒスパニックのマイノリティの代表です。

エスタブリッシュメントのプレス、例えば『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』の社説などを読んでいると、トランプの当選以降、冷戦的な内戦状態が見られるように思います。構造的にアメリカが分断されているのです。最初はそれほど懸念していませんでした。しかし、わかってきたことは、寡頭制、帝国主義的な党派はアメリカ・ナショナリズムの一つの側面、帝国主義的ナショナリズムだったのです。そして、トランプの大衆政党は、「アメリカを再び偉大に」、「アメリカファースト」のスローガンを掲げたように、これが別のタイプのナショナリズムだったのです。

ですから、アメリカで唯一、意志統一の可能性があるのは、対外政策です。対外政策は国家主義的、ナショナリスト的ですから、トランプの態度とエスタブリッシュメントの態度の融合が対外政策においてのみ実現できるのです。

この融合が実際に起こったのは、イランの核合意離脱です。表面的な理解では、トランプの単なる気まぐれに思うかもしれません。しかし、真実は、アメリカのエスタブリッシュメントからも大変よく受け入れられているということです。

この講演のプレゼンを書く前に、大変優秀なアメリカの分析者、マイケル・リンドと話し合いました。彼によると、アメリカの根源的な問題は衰退しつつある大国であるということでした。私は『帝国以後』に書きましたが、フランスとイギリスも同じ問題を抱えていました。アメリカの現在の状況は、脱植民地化前夜のイギリス、フランスの状況を思わせます。つまり、アメリカは自分の衰退を受け入れることができない。世界からエレガントにスマートに撤退することを受け入れられない国ではないかと思っています。

少し前、トランプの政策を分析したとき、私はオフショア・バランシングという概念に興味を覚えました。フランス語に訳すことができない戦略的な概念です。オフショア・バランシングというのは、アメリカは世界各地の軍事介入から撤退する。しかし、自分たちの世界的なヘゲモニーは維持する。それをどのようにして実現するのか。できるだけ効率よく、ユーラシアなどに散発的に介入することによってです。

つまり、ヨーロッパ、あるいは中近東、あるいはアジアで、アメリカの代わりに別の覇権的な国が出現しないよう、経済的な方法で、ときどき軍事的介入をするということです。トランプはこのオフショア・バランシングをすでに実行しているような気がします。

現在、明白なことは、このような戦略を実際に適用するためには、相手、つまり帝国主義的であり、自由貿易的な体制を好む陣営がそれを受け入れてくれる必要があります。アメリカがオフショア・バランシングを適用しうる場所を考えてみても、現実にはそれは不可能です。というのは、アメリカの力がもう不十分だからです。

ユーラシアの三つの場所を考えてみると、まず、日本の位置する極東地域からアメリカは撤退できません。中国があまりにも強くなっているからです。そして、中国とアメリカは日本の再軍備化を阻み、日本の軍事産業の発展や能力を阻止しています。

日本では憲法九条がとても大事だということもわかっています。これは国外に軍事的介入をするときの許可の問題に関わることのようですが、ヨーロッパから見ますと、日本の問題は憲法九条ではなく、日本が軍を持つことをアメリカが阻止してきたことだと思います。極端な言い方ですが、日本はアメリカの同盟国というより、保護領のようなものだと考えられます。今、アメリカは本当に同盟国を必要としています。しかし、その同盟国は中国に対峙できる状況にはないということです。

この地域には、さらに奇妙な点が一つあります。フランスは核兵器を持っている核保有国です。しかし、フランスにとって、核兵器は戦争を意味するのではなく、自国の安全を保障するものです。フランスは、核兵器は戦争を終わらせるという考え方に基づいて、核を保有しています。

極東地域で、中国に対して唯一、自国の防衛能力、核抑止力を持っているのが北朝鮮です。奇妙なことを言っていると思うかもしれませんが、フランス的な合理的見方をすると、そういうことなのです。感情的な話は抜きにしての見方です。もちろん、短期的にはすぐ問題が発生するわけではないでしょう。

なぜなら、アメリカの二つの陣営、いわゆるトランプ主義者も、クリントン派も中国に対して警戒心を抱いているからです。トランプ派は中国と貿易赤字などを巡って対立しています。クリントン派も、中国が非常な大国として台頭しているので、戦略的なライバルとなりうると、やはり警戒を抱いています。ですから、中期的、短期的に東アジアにおけるアメリカのプレゼンスは、比較的確かなもので、アメリカはこの地域に留まり続けるでしょう。

中国が南シナ海の支配権を取ろうとしています。小さな島々を押さえて、いろいろな防衛システムをつくっている。それに対して、アメリカは勇気を持って反対しようとはしなかった。私が最近見た記事に、そう書いてありました。つまり、アジアにおいて本来、アメリカは非常に強力な大国であるはずなのに、それほど強くはなかったということです。

次にヨーロッパについてです。ヨーロッパも混乱と麻痺の地域です。しかし、ここでもアメリカはオフショア・バランシング政策を実施できません。

アジアと同じ理由、つまり、アメリカはヨーロッパが自立した軍事大国になることを阻止してきたからです。アメリカはドイツが戦略的な自立した国になるのを抑止してきました。そのため、西ヨーロッパは、ロシアの軍事体制に匹敵するような軍事体制がとれていません。それを考えれば、ヨーロッパでも、アメリカがすぐに撤退するというオフショア・バランシング戦略の即時実施は想像できません。

しかし、それは深刻なことではありません。ロシアがアグレッシブだと言われていますが、これはフィクションで、かなりイデオロギー的な解釈です。これは心理学的な問題、極端に言えば、精神病的な問題だと思います。私は、フランスの知識人にしては珍しく、ロシアに対して吠え立てていません。フランスの大半の知識人は私と違います。ですから、私はときどきパリのロシア大使館のランチに呼ばれます。そこで落ち着いた議論ができますし、ロシアのハイレベルの人たち、外交の人たちの責任感や慎重さを実際に目の当たりにしています。

ロシアの通常兵器は非常に弱いものです。そのため、新しい戦略的な核のドクトリンをつくっています。もし、ロシアの領域にNATOより大きな通常兵器による攻撃があれば、核兵器を躊躇せずに使うと言っています。しかし、今のヨーロッパには、それほどのアンバランスはない。平和を崩したいという気持ちはフランスにもドイツにもロシアにもないということです。

ドイツは今、アメリカに忠実であり続けるか、大西洋主義者になるか、ひょっとして中国と親しくするか、あるいは米中欧の三極形成を狙うか、どうしようかと思いあぐねている状態です。ただ、中国がドイツ企業を買い始めてからは、中国に対して、少し消極的になっています。

現在、新聞などを見ていますと、いろいろ整合性のないことが目につきます。実際、イランとの核合意からの脱退の問題があります。アメリカがイランとの核合意から脱退したことは、イランを攻撃しているだけだと思われるかもしれません。しかし、これはヨーロッパ、特にドイツ、フランス、イタリアに対するアグレッシブな態度でもあるのです。これらの国々は、イランと大きな貿易や商取引を行っているからです。これは、ヨーロッパにとって、深刻な問題です。

つい最近、ドイツとヨーロッパの経済的な大国にとっては、アメリカが脅威であると書かれた論文が出ています。先ほど、世界は整合性がない状態になっているので、将来のことは予測できないと申し上げました。私は、ヨーロッパ、EUについて語るとき、EUがアメリカの同盟国なのか、それとも対立する陣営なのか、どう判断していいのかわかりません。ポーランドは、今、アメリカの同盟国でもなければ、敵でもないと言っています。かつてのポーランドの状態を思えば、とても考えられないことです。こうした錯綜した状態が現在のヨーロッパの状態です。

三つ目に中東地域があります。ここは、ヘゲモニーの問題が問題となっています。アメリカにとって、もちろん重要な問題です。アメリカが、この地域で絶大な権力を持っていたかのように行動し、イランをコケにするような書き方をする人もいるかもしれません。

しかし、現在この地域で何が起きているかといえば、実際は米国が一つの戦いに負けたのです。イラクに侵入し、イラクを破壊しました。その結果、イランが強くなり、イランのヘゲモニーの問題が中近東全体に起きているのです。シリアも何とか生き延びています。そして、レバノンには親シリア、イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラがいます。

ここでは、シーア派を脅威であると語ります。しかし、人口学者であり、家族形態などを研究している者の目から見ると、シーア派の地域は、相対的に女性の地位が高く、父系家族制がそれほど強くありません。そんな地域こそが、国家をつくることができ、国として効果的に機能するところなのです。ロシアが効果的に中近東に介入しているとすれば、それはロシアがパートナーとして、良い同盟国を選んだからです。西欧の同盟国であるサウジやスンニ派のアラブの諸国のほうが、効果的な国ではないのです。

最後に、日本が生き延びるかという問題が重要ですから、再び日本について語ります。日本にとっての優先事項は、少子化への国の支援対策だと考えています。根源的な日本の問題は人口動態です。戦略的には短期的ですが、アメリカは、日本が中国に対抗するための支援はしてくれるでしょう。日本との関係はアメリカにとっても優先的な関係です。日本がアメリカを必要としているだけではなくて、アメリカも日本を必要としているのです。

日本は、世界第二の技術大国です。また、アメリカと日本の技術資源を足すと、技術的に優位だと言えます。アメリカの元国務長官マドレーン・オルブライトの古い表現を使えば、アメリカにとって日本はすでに必要不可欠な同盟国なのです。

次に北朝鮮についてです。『ル・モンド』の東京特派員、フィリップ・ポンスが書いた「北朝鮮―変貌するゲリラ国家」という記事を読みました。それを読んで、北朝鮮政権は常軌を逸しているのではなく、戦略的安全保障に執着しているのだとわかりました。北朝鮮は、朝鮮戦争の際、戦火の場と化しました。従って、この戦略的な執着は当然のことかもしれません。心理的、歴史的に日本と北朝鮮の間にいろいろ問題があると思いますが、北朝鮮の懸念は理解できるのではないでしょうか。

ここで、驚くべきことが起きました。まず、アメリカの奇妙なアプローチ、行動が明らかになりました。トランプが北朝鮮に近づこうとしたことがポジティブに捉えられました。その後、イランの核合意を脱退しました。これはネガティブなことと捉えられるかもしれません。しかし、全体的、均衡的なことを考えれば、そうではないのです。アメリカはイランという核開発、核兵器を諦めた国との合意から脱退し、核を保有した国と交渉したのです。

イランとの核合意脱退を見て、北朝鮮がアメリカとの交渉をやめるのは自明なことでした。北朝鮮が核兵器開発を断念することは、バカげた夢だと悟ってしまったのです。

今の恐るべき、憂慮すべき状況を私は大変懸念しています。アメリカがいろいろなところで混乱の種をまいているからです。現在の行動は核拡散を促しているようなものです。北朝鮮とイランの状況を見て、アメリカと問題を抱えている国々が、核を保有しなければ安全ではないという教訓を得たのです。


次に、続く・・・・・
 
 
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